「自分のために生きていける」ということ


 斉藤学(著)…だいわ文庫

…退屈感や寂しさの基底には、自己認識の問題が横たわっている。私はこの本を、自分は健康だと思っている人々のために書いたのだが、そうした人々が日常生活の中で感じるちょっとした違和感(たとえば、職場や学校などで覚える「場違い」な感じ)や自信のなさが、私のクリニックに治療を求めてやって来る人々の「私なんか生きていてもしかたがない」という鋭い自己否定と質的に違うものとは思わない。これらはいずれも、現代を生きるものが抱え込まざるを得ない、厳しい自己監視装置から発していると思うからである。自己評価が低すぎて治療を必要とするまでに至っているか、否かの差は、その人が子供時代に受けたトラウマ(心の傷)の質や量によって決まるというのが私の考え方である。傷の程度の差はあっても、家族の中でのトラウマを完全に免れて大人になった人などいないから、人は誰でも自己否定的なところを抱えているのである…

離人症とは、世界が生々しく迫ってこないで、自分と外界の間にベールがあるような感じです。「自分が自分でないような感じ」「自分がなぜここにいるのか、わからなくなった感じ」「自分のしていることが、自分でしているように思えず、傍観者のように見ている」「夢の中にいるような感じ」「自分の体が自分のもののように感じられない」という症状です。…

 自分の症状を的確に表現してあるような気がした。そのトラウマを治す策がいくつか紹介されている。