日本テロリスト?…永遠の0ゼロ


 百田尚樹(著)…講談社文庫
本のタイトルと帯の宣伝文句に魅かれ、久々に長編を手にした。

 戦時中の話が中心だ。私の母方の祖父も戦争で死んだ。ウェーク島という島を占領した指揮に従事したことが、親戚中では英雄扱いだ。

 もう亡くなったが、戦後、アメリカ人の攻撃により、船上で死んだ祖父の長男。私からすると叔父になるが、米軍基地で働くという奇妙な生活があった。そこでみつけたのか、占領されたアメリカ人が書いた本を見つけてきて自慢していたのを子供の頃の記憶として思い出す。

 この本にもあるのだが、特攻隊は、英雄という美談でなく、テロリストという見方からもとらえている。

 戦国時代の切腹といい、特攻といい、世の中で権力をもったものが、命令を下し、下々が犠牲になったことがあまりにも多いことか。

 それにしたがい、死んでいった祖先は、何と苦しい人生だっただろう。

 今、世間では自殺人口が3万人というが、本当は、未遂などや世間への影響を考えてこの数倍の人が今、自殺に追い込まれているようだ。

 仕事ができなければ、リストラという横文字はいいが、実際は、腹切ってくれと願う上司も多いだろう。

 「死ね」という言葉も、冗談で時々耳にする。しかし、今の私には命令にしか聞こえない。人件費を減らしたい。帳簿をきれいにしたい。そういう体裁を整えるために…

 もし、自分も管理職に戻ればそれでふりまわされるだろう。兎にも角にも目の前の敵をうちつぶすことは、今の時代も変わらない。

 祖父の墓は、海軍墓地に眠っている。享年42歳だ。船上で敵飛行機の攻撃をうけながらも最後まで甲板上で指揮をとり、撃たれて亡くなった。

 そのときの状況を上官が勇ましい姿だったと家族に手紙を送ってきている。祖母はそれを地元の資料館に提供している。

 でも、美談化される死。これがある限り、戦争もこの世からなくならないだろう。

 この本で、戦争のみじめさを改めて考えさせられた。